先生の隣にいたかった
「成川、話って?」
俺は放課後、成川に話したいことがあると言われて、体育館に行った。
「先生は…
俺がいおちゃんのこと好きって、
知ってますよね?」
「…それで?」
「冬休み、家に帰るみたいです。
それで、聞いたんです。
冬休み、どうして過ごしたい?って。
…いおちゃんは、
大好きな人と過ごしたいって言ったんです」
成川が俺に言いたいこと。
それが全然分からなかった。
でも、成川は話し続けるから、
最後まで何も言わずに話を聞いていた。
「…いおちゃんのいるところに行きたいけど、
俺じゃないみたいです。
……俺じゃないんです。
でも、いおちゃんは…
…待っているんです。
大好きな人を…ずっと
…クリスマスの日、
好きな人との思い出の場所で、待ってますよ」
成川はそれだけ言って、体育館を出て行った。
思い出の場所で、待っていると言われてから、成川が俺に言いたかったことがわかった。
俺といおの初めての思い出の場所は、
ひとつしかなかったから。
でも、いおの気持ちに応えられないなら、
行かない方がいい。
そう思っていたはずなのに、
俺はクリスマスの日、いおがいるところまで、車を走らせていた。
だから、いおに期待させたのかもしれない。
いおが言おうとしたことを
最後まで聞いてやりたかったけど、
聞けなかった。
言われることが分かっていたから。
それに、聞いてしまったら、
俺の気持ちまで、いおに伝えてしまいそうで
怖かった。
だから、これ以上はだめだと…線を引いた。
でも、俺が線を引けば、
いおは悲しい顔をする。
いおの悲しい顔を見るのが
辛くて、
苦しかったから、
いおの言葉を遮った後すぐに、背を向けた。