先生の隣にいたかった
〜幸せを願って〜
「もう卒業だね」
「卒業だね」
時間が過ぎるのは、あっという間で、私たちは今日、この高校を卒業する。
「日向、彼氏さんきたよ」
「ちょ、ちょっとやめてよ」
「ごめんごめん。おはよう、翔太」
「おはよう」
「じゃあ、私は邪魔みたいだから、先に行くね」
邪魔なんかじゃないよ、と言う日向を気にせず、私は教室に向かった。
こんなことで笑い合えるのも、最後なんだと思うと、少し寂しくなる。
「いおちゃん、おはよう」
「おはよう」
教室に行くと、伊月君が席に座っていた。
二年生は、日向とクラスが同じだったけど、三年生は離れてしまった。
でも、伊月君が、また同じクラスになった。
日向と翔太も最後は、同じクラスになって、私の知らないうちに、二人は想いを寄せていた。
でも、私がそれに気づくまで、二人とも付き合わなかった。
翔太が私に言ったことをずっと、気にしていたみたい。
先生がいなくなってから、色々なことがあった。
でも、私は何も変わらなかった。
「いおちゃん、俺、まだいおちゃんのこと好きだよ?」
「ありがとう。私も好きだよ、友達として」
「だよね」
先生が、いなくなってからも、伊月君はずっと想いを伝えてくれた。
「伊月君。ありがとう。伊月君の想いには応えられないけど、嬉しかったよ。
…伊月君に出会えてよかった」
「こちらこそありがとう。
俺はいおを好きになれてよかったよ。
失恋は辛いけどね」
そう言って、笑う伊月君を見るのも、今日で最後になる。
「いお…大好きだったよ」
伊月君が微笑みながら、言ってくれた言葉。
きっと忘れない。
この高校での思い出は、
全部がいい思い出ばかりではなかったけど、
どんな思い出も、私にとっては大切だから。