私のお願い、届いてますか?
「…秀人の研究に影響でたらやだもん…」

目を逸らす梨々香に、俺は小さくため息をつく。

「…そんなの気にすることじゃない。…稲山先生に、もう少しバランス良く生活したほうがいいって言われてたところだったし…」

社会に出てから、このままのスタイルを貫くと、きっと辛くなって自分の首を絞めることになると、指導が入ったところだった。

「…そう…なの?」

「…うん。だから、…梨々香との時間も増やすつもりだった」

あえて言葉にして、自分の耳に入ってくると、かなり恥ずかしい。

心の中がむず痒くなるほど、恥ずかしい。

でも、嘘ではない言葉。

ふと、梨々香の頬が赤く染まっていくことに気がつく。

同時に、梨々香が手で両目を押さえた。

「…梨々香?」

「…ごめん…涙出そう…」

えっ…。

予想していなかった反応に、思わず梨々香のその姿を見つめてしまう。

「…っ…」

涙を堪えながらも、鼻を啜る梨々香が、愛おしいと思ってしまう。

そっと前髪を掻き分けて、広い額に唇を近づけた。

「…それ以上優しくされると…っ…私…甘えすぎちゃう」

「…いいよ」

そっと、目を覆っている手を掴んで、梨々香の顔が見えるようにする。


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