私のお願い、届いてますか?
「本当にごめんなさい」
場所を、自動販売機のある休憩室へと移し、私はすぐに謝罪をする。
「頭を上げてちょうだい。梨々香さん、あなたが悪いわけじゃないのよ」
秀人のお母さんは辛いはずなのに、慌てて私の下げた頭を戻すように私の肩を優しく戻そうとした。
「もうすぐ目覚めるんでしょう?大丈夫よ」
「で、でも…」
お母さんだって泣きたいはず。さっきまでハンカチで涙を拭いていたのだから。
「…あいつなりに守ろうとしたんだろう…」
少し後ろの方で静かに立っていた秀人のお父さんがゆっくりとした落ち着いた口調で話す。
お父さん…秀人と雰囲気が似てる…。
「この前帰ってきた時に、秀人、梨々香さんのことチラッと話してくれたの。ううん、口数は少なかったけど、あの子の口からそういう話をする時が来るんだなって…嬉しくなっちゃった」
ふわっと優しく微笑んだお母さんに、私の胸がぎゅっと締め付けられる。
「落ち着いたら、家に遊びにきてね。賑やかな妹と弟がいるけど」
「…はい」
「不器用なあの子のこと、よろしくね」
「はいっ…」
辛いのは私だけじゃないのに、涙が溢れてくる。
もっと…強くならなきゃ…。