私のお願い、届いてますか?
「…梨々香、俺の眼鏡ある?」

「あっ、うん…」

ベットの横の棚に置いてあった眼鏡を秀人へと差し出す。

眼鏡をかけた秀人は、時計を見ると、小さく息を吐いた。

「よかった…何日も経ってたわけじゃなくて」

時間じゃなくて、日付を確認してたんだ。自分がこんな状態なのに…冷静なところは変わらないんだ…。

すごいな…。そうだ…

「秀人のお母さんとお父さんもこっちに来てるんだよ」

「えっ?父さんと母さんが?…まあそうか、息子がこんな状況だもんな」

少しだけ驚くと、冷静にそう言って、眼鏡を外した秀人。

目の前で、当たり前のように話をしたり身体を動かしたりしている秀人が、すごく愛おしく感じる。

本当は、ぎゅーっと抱きつきたいけれど、身体のこともあるからそうできなくって、秀人の腕にぎゅーっと抱きついた。

何も言わない秀人だけど、沈黙が心地よくて安心できる。

あっ…秀人のこと看護師さんに伝えなきゃ。

ふと、そのことが頭をよぎって、秀人に伝えて、看護師さんのところに向かった。







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