私のお願い、届いてますか?
人物の顔を見て、俺は一瞬驚いて小さく会釈する。

「はじめまして…」

「はじめまして…朝岡…さん、ですよね」

前に雑誌で見た印象よりも、かなり疲れている感じはあるものの、隠しきれないオーラが出ている。

「はい…。この度は…大変なことに巻き込んでしまい、誠に申し訳ありませんでした…」

深々と頭を下げた朝岡さんを見て、俺はまだ痛む傷を抑えたまま、リモコンでベットの傾きを少し急にした。

「…朝岡さんは…悪くない…っていう場面だとは思います。実際、そうだと思います…。だけど…、もう少し、女性関係…気をつけた方がいいですよ」

自分の言葉を客観的に見直すと、かなり失礼で酷なことを言い放ったと思う。

だけど…なんとなく、朝岡さんはストレートな言葉を求めている気がした。

しばらく下げていた頭をゆっくりと戻した朝岡さんは、深刻な表情で、俺に紙袋を渡した。

「…午前の便でこっちに駆けつけてて…目を覚ましたと聞いて、それで直接の謝罪をしたかったんです」

「梨々香ですか…」

俺が目を覚ました、と知っているのは梨々香だし、朝岡さんとも繋がりはある。

「…はい。…あの…誤解しないでください。この件で迷惑をかけたので…それで連絡をしただけで…」

弁解をする朝岡さんのことを、俺は率直にらしくないと思ってしまった。

朝岡さんは、今回のことでだいぶ気持ちに余裕は無くなっている。

俺を刺した女性は、朝岡さんにとっては一体どんな存在だったのだろう。



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