私のお願い、届いてますか?
それぞれお風呂に入って寝る準備を整える。同じベットで横になって枕元のリモコンに手を伸ばす。

「明日も朝早い?」

「うん。今日切り上げた実験やってしまわないと…。梨々香も仕事だろ?」

「う、うん。そっか…頑張ってね」

その会話の梨々香の表情から、ちょっとがっかりした気持ちを察した。

多分…梨々香はもう少し触れ合いたいと思っている。

でも…今の俺は、梨々香の肌に触れたらメチャクチャにしてしまうんじゃないかってほど抱き潰してしまう気がする。

離れる寂しさで梨々香を抱くのではなく、嬉しさに溢れた時に指先から髪の毛1本1本まで気持ちを伝えるように抱きたい。

ただ…腕枕だけは。

電気を消して、そっとさりげなく梨々香の頭の下に腕を入れる。

「…一緒に寝るのも何年ぶりかな」

えっ…?

「…1ヶ月に1回くらいは寝てる…と思うけど?」

「えっ…?」

あれ?梨々香…もしかして気付いてない?

「夜中だから、起こさないようにしてはいた…」

「…よかった…」

安堵の言葉を漏らした梨々香。そんな梨々香の頭に優しく触れて、

「おやすみ」

というと、梨々香も、

「…おやすみ」

と返してくれた。そして、すぐに規則正しい寝息が聞こえて来る。

俺は一瞬だけ髪の毛に口づけをする。

そして、耳元で

「梨々香」

いつも一緒に寝る時にしているように、耳元で梨々香の名前を囁いた。



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