私のお願い、届いてますか?
ブーッブーッ

ポケットのスマホが着信を知らせて震えた。

メニュー表をテーブルに置いて、ポケットから取り出す。

あっ…秀人からだ。すごく珍しい出来事に、私の顔が熱くなる。

「あ、あの…電話なので席離れます」

そう言ってお辞儀をして、お店の外に出ると通話ボタンを押した。

『…もしもし』

耳のすぐ近くで聞こえる秀人の声に私の心拍数が多くなっていく。

「…もしもし?」

『…飲み会だってメッセージ入ってたから…。慣れない地だから、帰り…気をつけて』

えっ…

「もしかして…心配して電話くれたの?」

『…まあ』

心配して電話をかけてきてくれるなんて思ってもいなかったから、すごく嬉しくて、体温が一気に上がる。

「大丈夫だよ。ほら、私そんな女子力ないし」

これでものすごく美人とか、めちゃくちゃ可愛らしかったら話は別だけど、残念ながら私からはそんな雰囲気をちっとも漂っていない。

『…はあ…。梨々香、何にも分かってない』

「え?」

今、ため息ついてた?

『…いいから、帰りはタクシーで帰って』

「う、うん」

なんかちょっと怒ってる?

『あっ、それと…』

他にも説教っぽいこと言われちゃうの?と、思っていると、

『…前に流れた沖縄旅行、今度行こう』

えっ…

「覚えてたの?」

『…写真見て思い出した』






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