私のお願い、届いてますか?
「わあ!これって最近話題のワッフル!」

流行りものに詳しい頼子は、箱の中身を開けてはしゃいだ。

その声に、優人と母さんも吸い寄せられるようにお土産の菓子箱を覗き込む。

「あら、やっぱり都会の食べ物はオシャレねえ」

感心した様子の母さんは、エプロンを腰に巻いて、キッチンへ立つ。

「今日は、兄ちゃんの好きな唐揚げらしいよ」

愛嬌のある明るい笑顔で、優人が俺の顔を覗き込む。

相変わらず、人との距離が近い。

「…そっか」

それしか答えない俺の壊滅的なコミュニケーション力。

「そういえば、兄ちゃんに化学と物理教えてもらいたいんだった」

特に気にしてない様子で、優人は話を続ける。

「明日小テストなんだって。マジ意味わかんなくて、お願い」

優人はそう言って、俺の前で手を合わせる。

「…わかった。問題集持ってきて」

「ラッキー!マジ感謝」

優人の表情が、子犬のようにパーっとキラキラしたものに変わる。

こんなにコロコロ表情の変わる弟が羨ましい。

すぐに問題集を抱えてリビングに戻ってきた優人はテストの範囲のページに折り目をつける。

ああ…この分野か。基本問題ばかりだ。

「この範囲の物理なら、公式3つ覚えれば、それらの組み合わせで解ける」

「マジ?でも他にもあるけど…」

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