私のお願い、届いてますか?
「…なんかあった?」

えっ…

リュックを下ろしながら、私の様子に違和感を感じている秀人に、動揺する。

「…ご、ごはん温めてるところだから、お風呂先入る?」

「うん…?そうしようかな…」

リビングを出た秀人の後ろ姿を目で見送って、小さく息を吐く。

ご飯食べ終わったら…玲子先輩から借りてきた雑誌を見せて、ちゃんと説明しよう…。












「…ごちそうさま」

食器をシンクに片付けて、戻ってきた私に、秀人はそう言ってコーヒーを飲んだ。

「で…、何か話があるの?」

「えっ…」

クイっと眼鏡を上げた秀人に、緊張が走る。

「…梨々香、誤魔化せない人だから、全部顔に出てる」

うそ…。

思わず両頬を手で覆って、ちらっと秀人を見ると、すごく優しい穏やかな表情をしていて、私の胸にあった大きなモヤモヤが込み上げてきた。

話をする前に泣くなんて、卑怯だって思けれど、込み上げるものは止められない。

視界がぼやけて、涙がこぼれ落ちたのと同時に、秀人の細い綺麗な指が伸びてきて、私の涙を拭った。

「…梨々香…俺、知ってるよ。あの記事のこと…」

「…えっ…」

「研究室に、あの記事の人…えっと…朝岡さんのファンの人がいて、朝から週刊誌見てて…」

そこまで言って、もう一度私の涙を拭い取った秀人は、指についた私の涙をぺろっと舐めた。

「…あの服、梨々香のお気に入りだって言ってたものだったし…首筋のホクロだって、梨々香のと一致してた。すぐに…分かったよ」

「…そう…なの…?」



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