偏差値高めで恋愛未経験の私が隣の席の男の子に溺愛されるお話〜春編 Spring 〜
ふう、これで今日の授業終わり。さっ、帰ろ帰ろ。


よし、学校に忘れ物は無いね。


そして、私が教室を出ようとした時だった。


「ちょーっと待った!楓織!」


な、何⁉︎なんか、凄い大きい声で私の名前呼ばれたんだけど、、、


後ろを振り返って見ると、めっちゃボーイッシュな子が一緒にいる男の子に嗜められてた。


「おいおい、そんな大きな声出すな。」


「だってだって楓織に会えたんだよ!あの楓織に!」


「あー、はいはい。例の楓織さんな。久しぶりに会えたからって、テンション上がり過ぎ。」


「嬉しいからだよ!」


なんか仲良さそうに会話してるけど、これはどういう状況?あれ、私呼ばれたんだよね?でも、私この人達のこと知らない、、、


「あ、あの、どちら様ですか?」


あれ、女の子の方がきょとんとしてる。男の子の方はそれを哀れなものを見る目で見ている。


ん?私、なんか変なこと言った?だって、本当に記憶ないし、もしかして何処かで会ったことあるの⁉︎


「え、えーっと、気を取り直して、私は桧山翔央《ひやましょう》本当に楓織、私のこと覚えてない?」


「は、はい。本当に海馬の何処を探しても見つかりません。ご、ごめんなさい、桧山さん?」


「なんで疑問系?翔央でいいよ。でもそっかー、記憶にないかー。私ってそんなに影薄かったんだね、実琉。」


「昔っから、影だけは薄かっただろ、印象は濃いけど。あ、俺は夏方実琉《なつかたみのる》って言います。一応ひーちゃ、ゴホンゴホン、桧山翔央の彼氏です。」


夏方くんはわざとらしい咳をして、何か言いかけたことを紛らわした。何だったのだろう。でも彼氏さんか、凄いなこの歳でカップルって。


それにしても、私は昔何処で2人に会ったのだろう。


「翔央ちゃん、私たちは昔何処で会ったことあるの?」


「翔央ちゃんだってさー、お前そんな呼び方されたことねーよなー。」


「実琉の『ひーちゃん』呼びと似たようなもんでしょ。」


「なんっ、お前それ言うな。キャラ崩壊する。」


「今に始まった事じゃ無いって。」


なるほど、さっき言いかけたのはあだ名のことだったのね。2人とも、仲良しだなぁ。


「で、本題だけど。」


あ、忘れてた。私が昔何処で会ったのか聞いてるところだった。


「楓織、幼稚園の時からそろばん行ってたでしょ。そこに私も居たの、覚えてない?」


そろばん、、、私はそろばんを3歳から始めて、小学4年生で辞めちゃったけどその時の記憶なら沢山ある。でも、その中に翔央ちゃんの記憶は1mmもない。本当に微塵も。


「ごめん、何にも覚えてないや。夏方くんとは会ったことある?」


「いや、俺はないね。えー、楓織さんの苗字は白鳥だっけ?白鳥、ひーちゃんのこと覚えてなくても罪悪感抱えなくていいぞ。こいつが影薄いせいだから。」


あ、今ひーちゃん呼びした。開き直ってるな、もうこれは。


「翔央ちゃん、本当にごめんね。」


「大丈夫、大丈夫。そんなもんで私のメンタルはやられないから。」


「ふふ、そっか。これからよろしくね、翔央ちゃんと夏方くん。」


「うん!もう1回友だち関係作り直そ。」


「俺はひーちゃんがそれでいいんだったらいい。」


あはは、さっきから『こいつ』とか『お前』って言ってたけど、夏方くんは翔央ちゃんのこと大好きなんだね。さっきの夏方くんの言葉で確信した。


「あの、ちょっといいかな?」


そして、私の背後から怒りの混じった声が聞こえる。そこにいたのは、


どす黒いオーラを身に纏った碧依くんだった、、、


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