偏差値高めで恋愛未経験の私が隣の席の男の子に溺愛されるお話〜春編 Spring 〜
あれから10分間走り続けて、家に辿り着いた。


牡丹学園は私立だからほとんどの子が電車通学なんだけど、私はここから近いからという理由で受験した。


だから、家と学校の近さは自慢できる。


私の家は駅前の高層マンションなので、バスのターミナルがたくさんある。本当はそこのバスで行けば、5分で学校に着くけど学生証で学割の定期を申請したときに近すぎるから駄目だと言われた。


結果、徒歩で通うことになったのだ。徒歩だと最低20分はかかる。でも、私は文武両道の天才だからそのくらいではへっちゃら。


でも、今回だけは違った。


「鞄おっも~!教科書の量は少なくても、重さはvery heavyだ~!」


なんて英語を交えながら、家の玄関の前で独り言を言う。


そして、サブバッグの内ポケットにある鍵を取り出して家に入った。


「ただいま~。」


帰ってきたときの挨拶をするが、返事がない。よく見ると、玄関の靴がそれぞれの予備用の靴の4つだけだった。


うちは、お父さん・お母さん・私・妹の4人家族だ。妹は私のたった1歳だけ年下。一応、あの子も天才。


1歳だけだけど、私よりも年下のくせに既に彼氏がいるらしい。同じ塾のクラスメイトなんだとか。


生意気なやつめ。私より人生経験豊富なんですけど。


ま、いいか。とりあえずお父さんが仕事でいないのはわかるし、お母さんは買い物にでも行ったのだろう。推測できる。


じゃあ、私の妹、白鳥桜織《しらとりさおり》はどこいった?


ま、いいか。考えるのやめよう。カレンダー見たらわかるし。


どうせ桜織のことだから彼氏とデートなんでしょ。まったく、人生何回目ですかっての。


そんなことを考えながら、廊下を抜けてリビングに入った。


カレンダーを確認してみるとほらね、『彼氏とデート♡』って書いてるわ。わざわざハートマークまでつけちゃって。


はぁ〜、まぁ私は勉強好き好き星人だから彼氏なんていても無駄なだけだし。


小学校の頃はいろんな男の子に告白?的なことをされたけど、もう中学だし私立だから皆、恋とかきっと興味ないはずだから大丈夫かな。


断るこっちも心が痛くなるからそんなことがなかったらいいな。


なんて心配する必要もないことを考えていたら、


「にゃ〜」


綺麗な澄んだ猫の鳴き声。


この鳴き声はうちが飼っている二匹のメス猫のうちの一匹、みるくだ。


みるくは、白を基調とした毛並みが特徴的なスコティッシュフォールド。スコティッシュフォールドの中で白い子は珍しいらしい。


「みゃ〜」


こちらの可愛い鳴き声の持ち主は、もう一匹の猫、くるみ。


くるみは、みるくと同じスコティッシュフォールドだけど、毛並みは茶色を基調とした、the スコティッシュフォールドって感じの子。


両方、死ぬほど可愛い。


いつも、私の心を癒してくれる、大切な存在。


そんな私の猫を使った、癒され方はこうだ。


「もふもふ〜」


二匹は私に凄く懐いているので、直ぐに足元に集まってくる。


それ目がけて、鞄を投げ捨てて顔からdiveするのだ。


これが何にも変え難いストレス解消になるのだ。


5分ほどして、離してやっておやつをあげる。うちの猫は、食べた分だけ動いて消費する女子力の高い猫だから、太らない。だから、あげたい分だけおやつをあげられる。


訴えてくるつぶらな瞳に向かって、謝らなくてよくなるのだ。そこはかなり助かっている。訴えられたら、確実に負ける未来しか見えない。その未来がはっきり見える。


2匹に後ろ髪を引かれながら、私は自分の部屋に入る。


鞄を置いて、寝ることにした。流石に制服のままだと、色々と問題が生じるので、部屋着に着替えて眠った。


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