君が月に帰るまで
1.プロローグ
1.プロローグ


「お前を2週間の地球謹慎処分とする。いくら月の姫君とて、罪は免れない。地球へ行き、頭を冷やせ!!」

月の宮殿で、大王は娘の月夜美谷之命(つきよのうつくしだにのみこと)にそう言い渡していた。

「お父さま、なぜですか? あまりにもひどすぎます。私は悪いことなどなにもしておりません!!」

父親の前で、家来たちに拘束された姫は、必死の形相で反論した。着せられた十二単が乱れる。

「黙れ!! お前のしたことは月の行く末を欺く行為。許されることではない」

「お父さま!! お願いです、ご慈悲を!! お前たちもやめろ! 離さぬか!」

じたばたと暴れる姫を家来たちはぐっと後ろから羽交い絞めにして押さえ込む。

「謹慎先は、もう決めてある。そこで過ごすように。家主には(さく)がついていき説明する。朔、家主には相応の礼をすると伝えよ」

「御意」

大王の隣で控えていた、家来の朔は頭を下げてそう返事をした。

「謹慎先……!? それはどこですか?」

「行けばわかる。姫よ、よく反省するがよい」

抵抗も虚しく、姫は宮殿から連れ出され、無理やり飛車に乗せられた。
謹慎処分という割には、豪華な飛車に乗り、美しい十二単を着せられて、ずいぶん待遇のよい犯罪者だ。
月の住民からの、蔑んだ視線が飛車の中に刺さるような気がしていた。
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