君が月に帰るまで
9.鉄格子の窓
同じ頃、月の大王は頭を抱えていた。今までになかったことが次々と起こったので、月夜の処遇をどうするか早急に考える必要があったからだ。

朔の想念を呼び出して、話を始める。

『朔―!! 一体どうなっておるのじゃ、わしは気が気でならん』

『申し訳ございません』

『わが子ながら不憫じゃ。それでも好きな人と結ばれた方が良いという親心も一応持ち合わせておる。わしはどうしたらよいのじゃ』

『大王様、そろそろ月の法律をかえたらいかがですか。地球へ降りて恋愛する権利を認めるべきなのでは』

『それでは月の存続が危ういではないか』

『それで滅びるのならそこまででしょう。月の住人の遺伝子は地球人とまじりあって存続し続けます。国家の存続が、人の幸せの上をいくとは思えません』

『朔、お前はいつも鋭いのう。すべての恐怖心をなくしているかのようだ』

『人と人とが想いを通わせる。それのどこがわるいのですか』

『わかった、とりあえずは月夜の処遇じゃ。地球謹慎期間を短縮する。明後日で帰還せよと伝えよ』

『明後日ですか? 予定ではもう1週間あるのでは?』

『問題が多すぎる。月夜が自分で招いたこと。したかあるまい』

『ですが……!!』

『明後日、迎えを出そう。月の入りの頃に迎えにいくと伝えよ』

『……御意』『大王様、ひとつお聞きしたいのですが』

『なんじゃ』

『もし、はじめ様が姫と恋仲になることを望まれたらどうされるおつもりですか?』

『なっ、なっ……そんなこと考えとうもないわい!!』

『変な親心出さないでください。どうなのですか?』

『……月夜を、地球に降ろすしかなかろう。好きな人と一緒になるのが我が子の幸せ。それはわしも心得ておる。何を隠そう、はじめという青年を多少なりとも気に入ってしまった。
月の魔法でうまくはからえるじゃろう。あぁー、そうなったらどうする??』

むせび泣く声が聞こえて、朔は頭を抱える。
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