君が月に帰るまで

わいわいガヤガヤ賑やかい。こんなに賑やかなのは、初めてじゃないかと思うくらいだ。

「へぇー、詩穂さん美容師なんですね」
「うん、駅の近くにソレイユって店あるでしょ、あそこ」
「じゃあ俺の髪、今度ただで切ってくださいよ」
「やだ。割引くらいはいいかな」
「詩穂、俺もそろそろ切ってほしいな」
「いいよ、今晩やろうか」
「あー、零さんはいいんだ」
「彼氏は特別」

ダイニングテーブルからはゲラゲラ笑い声がする。詩穂さんはとってもフランクな感じでとっつきやすい。遠くから見たら、本当ゆめとそっくり。

「はじめ、びようしってなに?」

向こうの声が聞こえたのか、ゆめがそう訊いてくる。

「ああ、髪を切る仕事をする人のことだよ」
「髪……、そっか」
「はじめ様、夕方の作戦のことまた詳しく教えてください」
「なんだかワクワクしますわね!!」

向田はまた楽しそうな顔をする。ドラマの中に入ってきてるみたいな気がするのかな。

食べ終わり、みんなで片付けをすませると、ソファやローテーブルの周りに集まって作戦会議をはじめた。

「きょうの17時にA駅公園で始めます。その名も、『大長縄跳び大会、みんなA駅に集まれ!!』 です」

「はぁーー????」

はじめ以外の全員の声が揃う。ザワザワと「やっぱりはじめは天然だ」「なんなのそれ?」「今からでも遅くない別の作戦を!!」など、あちこちから声が飛ぶ。
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