君が月に帰るまで
「あなたが連絡くれた方ですか?」
「いぇいいぇーい!!」
周りの人も気がついて、弥生の周りに集まる。動画に映ろうと人だかりができる。昭和の懐かし映像で見たことあるような光景だ。
「あなたも長縄やりましょー!!」
詩穂とゆめが入れ替わっているとは気づいていないようだ。今だとばかりに、かえでが拡声器越しにファンファーレの音をスマホで鳴らす。
「お集まりいただいたみなさん、ありがとうございます。消失事件は実は私たちの動画加工ドッキリでした。お騒がせして、申し訳ございません。お詫びに、みなさんと大長縄大会を企画しました! 夏休みの思い出にみんな楽しんでくださいね!!
今から練習時間を10分与えます。縄の本数が限られますのでそれぞれ指示に従ってください。ルールは3分以内で何回跳べたか、です。小学生のいるチームはアドバンテージを人数分回数にプラスしてつけます。さあみなさん楽しんでやりましょう!!」うまくかえでがみんなを煽り、うおーっ!! と地鳴りのような声と、かちどきが聞こえる。みんなやる気だ。
小学生が多いせいか、長縄でも盛り上がってくれたようだ。西野の生配信も、自分のチームの紹介にうつっている。思いのほか、西野はいい人かもしれない。
長縄大会は問題なくすすみ、みんな汗だくになって全チームの長縄跳びが終わった。
優勝チームにはお菓子の詰め合わせを特別に2つずつプレゼント。小学生はブーブー言ってたが致し方ない。時間がなかったんだ……。
俺たちスタッフ? 全員総出で参加賞をみんなに渡した。これっぽっちかと怒る小学生の多いこと。文句言うならあげないぞ。
みんなに参加賞を配り終えた後、西野が食らいついてくる。詩穂にカメラを向けてなにかやっていた。
動画を見ると、詩穂にウサギになれるのかと聞いている。
「なれるわけないでしょ? あなたたちの頭の中、どうなってるんですか?」
「でも、私みたんです!! ほらこの子も見たって言ってます!!」
どこからともなく、あの雪という女の子を連れてきて証言させる。
「うん、多分お姉さんはウサギに変身できるよ!!」
雪のにこやかな笑顔。本当に見たわけじゃないとは思うけど。
「わかりました。そう言うと思って、マジックショーを用意しています!!」
「へっ!?」
そう来ると思っていなかったのか、西野は変な高い声を出した。「あそこを見てください!!」
広場の隅の、野外劇用ミニコロシアムに例のテーブルを用意しておいた。