君が月に帰るまで


「きょうは疲れたね、ゆめもゆっくり休んで」

祖父の部屋の前まで送ると、ゆめははじめのズボンの裾を噛んだ。

「どうしたの?」
ぐいぐいと祖父の部屋までひっぱる。

「まさか、一緒に寝たいの?」

コクコクとゆめはうなづく。

「……、ねえ、ゆめ。僕もできれば一緒に寝たいんだけど、たぶん無理だと思うんだ。明日の月の出は4時18分。そしたらゆめは裸でしょう? その……ね?」

ゆめは首を傾げていたが、ピョンと飛び上がると祖父の部屋へ一目散に入って行った。

「ゆめ、おやすみ。明日は少し東京観光しよう? 朝、起こしにくるね」

暗い室内に声をかけて、襖を閉めた。

はじめは二階の自室に戻り、息をついてベッドに倒れ込む。

明日、ゆめが帰るのならここまでしなくても良かったのではないだろうか。でもなんだか火消しをした方がいい気がしたんだ。なんでかはよくわからないけど……。

明日でゆめとはお別れなんだ。まだ実感が湧かない。はじめはゴロゴロしている間に眠りに落ちていた。



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