君が月に帰るまで
「うん、待ってる。ずっと」
名残惜しそうに手を離すと、穏やかに微笑みながら、飛車に乗りこむゆめ。不思議なことに乗り込むと、ゆめの服は十二単に変わった。
雅な音楽が始まると、ふわっと飛車が浮く。新月で月は見えないはずなのに、満月が空に浮かんでいる。
すごいな。月の魔法の力は、月自体を光らせることもできるのか?
その光の道を辿るように飛車は去っていく。何度も何度も、ゆめは振り返る。やがてその姿は見えなくなり、あるはずのない満月が美しく空に浮かんでいたが、しばらくするとそれも消えて、あたりは暗い静寂に包まれた。