君が月に帰るまで
「すごい!! この曲になんか合ってた!!」
「二週間、よろしくお願いします」

月夜は三つ指ついて挨拶をした。

「うん、楽しく過ごそう。塾もあるけど、息抜きに東京観光しよう」

「どこか連れて行ってくれるの?」

「うん、せっかく来たんだし、地球のあちこちは難しいけど、東京なら案内するよ」

まじか!? 案内してくれるの? そんなこと……嬉しすぎる。

「ありがとうございます」

あぁ、なんか猫かぶってるのもつかれたな。いやウサギかぶってるか。月夜はそう思いながら息をつく。

「あの、名前って月夜でいいの?」

はじめが首をかしげながら訊いてくる。
かっ、かわいい。

「うん、月夜でもいいけど。せっかくだから地球ネームほしい」
「地球ネーム!? 面白そう」
「あなたがつけて。かわいいのがいい」
「僕? 僕がつけていいの?」

はじめは腕組みをして考え始めた。
ややあって口を開く。

「……"ゆめ"はどうかな」
「ゆ……ゆめ?」
「そう」

ゆめ……なんでそれ? まあ確かにかわいいけど。月夜は不思議に思いながらも「うん」とそれを受け入れた。「さっそくだけど、ゆめはこの部屋を使って」

「この部屋?」
「そう、ここならウサギになってもトイレ近いし、母さんの着物は向こうの和室にいっぱい入ってるから、そこから好きなの出して着ていいよ」

「そんな……勝手には」

ゆめは申し訳なさそうに顔の前で両手を振った。

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