君が月に帰るまで
5.疑惑
はじめは少し早めに起きて、ゆめの部屋へ向かった。
何だかわからないけど、怒らせてしまった。話をしなくちゃ。ケンカしたまま2週間なんて、よくないよね。
祖父の部屋へ続くドアを見ると、少し開いている。
そっとのぞいてみるが、人影はない。
「ゆめ……? 起きてる?」
そろそろと入るが、やはり廊下には誰もいない。はじめは祖父の部屋の襖越しに声をかけた。
「ゆめ、僕。もう起きてる? ちょっと入っていいかな」
「……うん」
やっぱり起きてたんだ。そっと襖を開けると、もうワンピースに着替えたゆめが丸窓を背にして正座してこちらを向いていた。
「おっ……おはよ」
凛とした姿のゆめに、はじめはドキッとした。
「……うん、おはよ……」
部屋に入ってすぐのところに、はじめも座った。なんか変な緊張感だ。
「あの、きのうなんか怒らせちゃったみたいなんだけど……ごめん。なんでゆめが怒ってるかわかんなくて……」
「……いいの。私が勝手に怒っただけだから。私のほうこそ、ごめんなさい」