君が月に帰るまで

「ゆめ、そこじゃまになるから、こっち」

背中を押して、お弁当コーナーへとゆめを連れて行く。「何がいい? サンドイッチとかもあるけど……」

「はんばーぐってどれ?」

ハンバーグ弁当を見せてあげると、それがいいと言うのでカゴに入れる。ゆめは他にももちもち大福や、ポテトチップスなどをカゴに入れていく。地球の食べ物が珍しいんだろうな。

「月の宮殿って、どんな料理が出るの?」

「んー、わしょく? みたいな」

「和食? ごはんに味噌汁に漬物的な?」

「あー、うん。そうだねそんな感じ」

「けっこう質素なんだね」

「食べ物ほとんど植物工場産だしね。ドームの畑の場所も限られるし。地球がうらやましいよ」

なかなか月というところはハイテクなのだな。ドームっていうのは酸素ドームか? 真空状態じゃさすがに生きられないよね。エネルギー問題とか、いろいろありそう。はじめの頭にいろいろな社会問題が浮かんでくる。

「私、お金払うね」

マイバッグに買ったものを入れて、コンビニをあとにし、家へ歩いていく。

ずいぶん明るくなって、日差しが照りつけて痛いくらい。

「はじめ……ありがとう」

「え?」

「なっ……なんでもない」

ありがとうって聞こえた気がするけど、しっかり聞こえなかった。ゆめはスタスタと前を歩いていく。道もずいぶん覚えたようだ。
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