君が月に帰るまで
家を出る。そんなこと考えたこともなかった。全部捨てて平民になる。そうすれば心は自由かもしれないな。「あ、そろそろ12時だぞ」

夏樹が時計に目を落とす。このまま話していると、いろいろしゃべりそうだったので助かった。

「そっ、そうだね。ふたりも入り口に来ると思うから。一緒にごはん行こうよ」

そう言って慌てて立ち上がると、バランスを崩してつまづく。夏樹がちょうどよく受け止めてくれたので転ばずにすんだ。夏樹、いい人。

入り口に向かって歩いていくと、はじめの姿が見えた。

「あ、はじめ! ごめん待った?」

仁王立ちのはじめ。なんか怒ってる?
顔が怖い。

「ううん、今来たとこ」

声は普通かな。気のせいだったのかも。

「夏樹と話してたんだ。そこでたまたま会ってね。夏樹は動物のお医者さんになりたいんだって、すごいよね」

「そう……よかったね」

はじめはスッと目をそらす。やっぱりなんか変?

「ちょうど昼飯行こうと思ったら、そこで会ってさ。喉乾いたって言うから、自販機に案内がてら、ちょっと話してたんだ」

夏樹が話すと、そっちを見る目が心なしが怖い。どうしたんだろう。

かえでもきて三人が気まずい雰囲気に包まれる。

「えっと……せっかくだし、みんなでごはん行く?」

雰囲気を変えるのに精一杯。それでも行きたかったふぁみれすに行けることになって嬉しかった。どりんくばーは、魔法みたいだと思ってたから。
オムライスを食べて大満足。はじめと夏樹がドリンクを取りに行ったのでテーブルにかえでとふたりになった。
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