君が月に帰るまで
「じゃあ、帰るね」
「ゆめ、気をつけてね」
「はーい、ご心配なく」
ひらひらと手を振りながら、ゆめは帰っていく。もうどこからみても月の人には見えない。
「あれ、ゆめ帰ったの?」
夏樹が声をかけてきた。
「ああ、うん。英会話のオンライン授業だって」
「ふーん……。なぁ、あいつ来週には帰るんだろ? 昨日ちょっと聞いた」
図書館で話していた時だろうか。はじめは心臓がぎゅっとなるのを隠して夏樹と話し続けた。
「ああ、うん。そうだよ来週には帰るみたい」
「そっか。なぁ、あいつ帰ったらどうなるか知ってるか?」
「帰ったら? 知らないけど……」
「結婚するっていってたぞ」
「ええっ!? 結婚!?」
思わず大きな声が出る。なにそれ。
「家がそうだから仕方ないって言ってた。今どきそんなことあるのか? あいつもまだ18だろ?」
「うん……そうだね」
18歳かどうかは不明だ。はじめは、ゆめはいったい何歳なんだろうかと思った。