君が月に帰るまで
「なんか秘密でもあんのか?」
ビクッと体が震える。
「ひっ、ヒミツ!? ないないそんなの」
夏樹は口を押さえて、肩を震わせていた。笑ってるようにも見える。
「わかった。でも話聞いてやれよ」
夏樹の態度にイラッとする。
なんでそんなにゆめのこと知ってるんだろう。
昨日、どんなこと話したんだろう。
はじめは頭の中が沸騰しそうになるのを抑えながらなんとか三限目を受け終えて、家路についた。
帰りながらスマホを確認すると、兄の零からメッセージが入っている。
『今日の15時頃、家に寄るからよろしく!』
メッセージを確認すると、顔色を変え、はじめは家に向かって走り出していた。
まずい、まずい、まずいっ……!!
あっちは鍵持ってるし、ちょうど変身するところなんか見られたもんなら、ゆめは月へ帰ってしまう。
まだ、帰ってほしくない。もう少し一緒にいたい……。
胸のざわつきを押さえながら、あわてて玄関を開けた。そこには兄の靴。