if…運命の恋 番外編Ⅱ『運命の出会い』
その紳士の男性は、私に笑顔を向けながら とんでもない事を言って来た。
「春子ちゃんが寝てる間に、京都に電話しといたよ。大した事なかったけど、怪我もしてるし暫くはこっちで預かりますって」
「はい? 今、なんて?」
うちの両親は、私が自ら嫁に行く事を望んで福岡に行ったのだと、大いなる誤解をしたみたいだ。彼のお父様の話に「それなら、結婚前に行儀見習いって事でよろしく」と簡単に事をすすめていたようだ。
さすがに人様の親に文句を言うわけにもいかず、そそくさと逃げようと考えを決めた。
「あの、、父がわけの分からない事を、、申し訳ありません。ええ、と私は京都に帰りますので、、」
『今、何時だか分かってる?』
そんな彼の声に、改めて腕時計を確認すると。22時を超えている。
「嘘、、こんな時間!」
『今夜は母屋の客間に泊ってください。明日、怪我の具合をみましょう』
それだけ言うと、プイっと顔を背けてリビングを出て行く。
”嫌われたかな? だって、、あんな風に言うんだもん”
リビングを出て、家政婦の女性に連れられ母屋に行き、食事と入浴を済ませたあと客間に通された。
確かに今夜は助かったけれど、彼に嫌な印象を持たれたまま帰るのは気持ちが落ち着かなかった。
でも結果から言うと、次の日も、その次の日も私が京都に帰る事はなかった。
翌日、朝食をいただき庭の華を見ていると、彼が診察室に来るようにと呼ばれた。
”ああ、、怪我の具合を診てくれるんだろう”と考えて向かった私に、彼が言った。
『、、この傷、、いまいちです。もうしばらく消毒をしっかりしときましょう』
「えっ? なら、、京都の病院に行きますので」
『あのね、、うちの両親に言われたんです。あなたがダメなら毎週のように見合いをさせるって』
「はぁ? それ、私に責任あります?」
彼は眉根を寄せて『あなたがここに来なかったら、こんな事にはならなかった。親が落ち着くまででイイから、行儀見習いしてください』と悪びれず毅然とした態度で私に命令に似た指示をする。