if…運命の恋 番外編Ⅱ『運命の出会い』
「嫌です!お願いです」切羽詰まったような声を出す女性に
『だから君には興味がわかないっていうか、好きになれない』
「す、、好きになれないって、、婚約者の事だって好きじゃないくせに」
『君には関係ない!俺たちの問題だ』と言い合う声が聞こえてくる。
いたたまれないその話を黙って聞いていたら、後ろから彼の母親が大きな声をかけてくる。
「あら、、春子さん、何ば盗み聞きしとーと?」
その声に私の身体がびくっと跳ねる。
「あっ、、」
お母さんのその声は診察室の中の彼にも聞こえたようで、扉が彼の手によって開けられた。
「ほんなこつ、京都ん女性はこげん事あたりまえなんかしら?」
そう彼の母親に言われ、恥ずかし過ぎて「ごめんなさい」と告げるとその場を慌てて離れようとした。
『ちょっと待って!』
彼が私の腕を掴んで引き留めようとしたけど、私はそれを振りほどいて逃げ去った。
私はそれから、なるべく彼と会わないように気をつけた。
食事の時は、なるべく視線を合わさない、話しかけない。恋愛なんて知らない私はそうする事で自分を保つしかなかったのだ。
寒い12月のある日、彼のお母さんに洗濯を言いつけられて一生懸命にタライの中でシャボンと格闘していた。洗濯機を購入していた私の実家では、今ではタライ洗濯はしていなかったからちょっと辛かった。
やっと洗い終わると それを硬く絞ってそれから、また冷たい水ですすいだ。水が指を刺すように冷たくて、自分の吐息をかじかんだ指に吹きかけてみる。
”ダメだわ。何にも感じない”
再び、洗濯物を硬く絞って中庭の干し竿のところに移動した。干し竿が高い位置にあって、やっと手が届くみたいだった。
私は近くに脚立のような台があるのを確認すると、それを利用する事にした。