if…運命の恋 番外編Ⅱ『運命の出会い』
『母さん酷いよ。彼女だって一生懸命、家事をしてるじゃないか! 今の時代、他の家は洗濯機だってあるし、だから脱水だってちゃんと出来る。そしたら、こんなに重いモノ持ち上げなくても良いし、危ない事にもならないよ。だいたい、彼女の身長じゃ、無理なのに・・』
「あらッ・・勇さん、貴方・・春子さんの肩ば持つと?」
『母さん』
「まぁね、そのどんクサイ娘・・貴方には相応しゅうなかばい
ほんなこつ結婚させる前に行儀見習いに来らしぇて良かったわね?」
私は黙って、その場を乗り切ろうと思った。私が彼に相応しいとか思えないし、
ましてや、彼は結婚だって考えてもいないだろう。
『母さん、誰も結婚しないとは言っていませんよ。彼女は僕の婚約者としてここにいるんですから。それに、、』
そこで、言葉が止まり、彼が私を見て来た。言いかけた言葉を彼の母親が奪い取る。「まぁ、そうばいけど・・ね」
『だったら、母さんが彼女に優しく教えてあげるべきです。
何も教えずに説教だけするなんて・・・』
「うちゃ・・教えられんばい。自分で考えて家事はするもんやろ?
ああ~ッ・・そうね、やったら 勇さん、あんたが教えてしゃしあげたら如何? そげんあいらしがるぐらいならあんたがすりゃ済むことばい。」
『可愛がるって、、ぼ・・僕がですか?!』
「ええ・・あなたのお嫁しゃんなんやろ?・私は今まで通りにするばい」
『・・・・わかりました。僕が彼女に教えます』
彼がそう言うと、お母さんは一瞬黙り込み、それから早口で言った。
「それから、そん娘ん部屋ばあんたん近くにしんしゃい。いつまでも時間かけとらんで、早う事ばすすめんしゃい。」
「ん?」お母さんの言葉がうまく入ってこなかった。ちょっと方言には慣れてきたけども。
なんだか、話が変な方向に行っていたのはわかっていた。博多弁なのか半分だけ聞き取れる。彼が私の教育係をする事になったようなのだ。
母屋の客間だった私の部屋が、彼と同じ別宅の2階になった。朝食作りから洗濯、掃除と教えてもらう事が多く、彼との部屋が近くなったのは便利だった。
それにしても、だからこそ手際よく彼は何でもこなせる天才だったのだと知ったのだ。