クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
先にロッジにたどり着いたわたしは、そろーりとドアを引いて中を覗く。
ロッジは入ってすぐにリビングがあるワンルームのお部屋で、わざわざ声をかける必要もなく妃崎先輩たちを見つけた。
妃崎先輩と2人のお友だちは、ソファーに座ってスマホをいじっていた。
わたしが入ってもなんの反応も見せない。
「あの、体調悪いんですか?」
近づいて声をかければ、1人がこっちを向いた。お団子ヘアーの先輩。
苛立ちを隠さない目でギロリ。
だけど、すぐにスマホに視線を落とした。
「うん、そー。ちょー頭痛くてきゅーけーちゅー」
あからさまな棒読み。
「そうですか……。薬飲みますか?」
「いい。ウチ薬アレルギーだからー」
お団子ヘアーの先輩が言うと、ほかの2人がクスクスと薄笑いを演じた。
「それなら、横になって休んだほうが早く治りますよ。中二階に布団が」
「スマホやってれば治るからへいきー」
「ぶふっ」
いよいよ耐えられなくなって吹きだした先輩たち。
ドライアイスのけむりが広がっていくような、イヤな空気が充満する。
汚い言葉で罵らなくても、笑い方ひとつで人の気分を害することができる。そういう笑いは、すっごくタチが悪い。