クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
ソファーに座って足を組んだままの妃崎先輩。清々しいほど動じていない。
ロッジにはわたしと妃崎先輩、それからいつの間にか玄関にいた斑が残っている状況。
「ウソよね、今の話」
妃崎先輩が凍てつく氷のような目を向けてきた。
ウソだと断言されてしまった。
「ビビらせてここから追いだしたかったんでしょうけどね、あいにく私はあなたの思いどおりに」
「ウソじゃないですよ」
話を奪うようにピシャリと断言に断言を返せば、妃崎先輩は口をつぐんだ。
「本当の話です。本当に3年前、ここで自殺を図った女性がいたそうなんです。……でも、その話には続きがあって」
「続き……?」
「彼氏に裏切られた女性がこのロッジにふらっとやってきて、あの梁に縄をかけて首をくくった」
見上げて梁を指さしながら話す。
高い天井には、柱と柱を繋ぐように太い木材が通っている。
「だけど、縄が切れて落っこちたそうなんです。そのときの音で平野さんとお友だちの男性が気づいて、女性は助かりました」
「……」
妃崎先輩はなんとも言えない表情でわたしの話を聞いてくれている。
「女性は、今では楽しく幸せそうに生きてるそうです。そのとき駆けつけたお友だちの男性と新しい愛を見つけて……。おばけはいませんが、ここにはそういう不思議な力があるんじゃないでしょうか」