クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「先輩が来てくれて助かりました!」
「ごめんね、うちのせいで。最初からいればもっと挑戦できたよね」
「いえ。一緒のグループになれてよかったです」
中には妃崎先輩の友だちのお団子ヘアーの先輩もいて、グループの子たちと笑顔で話している。
その笑顔はわたしに向けた嘲笑とは違う。
心の底から楽しむような純粋無垢なもの。比べものにならないくらい、ずっとずっと素敵な笑顔だ。
「佐紺先輩や妃崎先輩から見たら、わたしは頼りないかもしれませんけど。だからこそ、みんなの力が必要というか……。この遠足もわたし1人の力でできたわけじゃありません。友だちがいたからできました」
ここに溢れる笑顔は、おじいちゃんが土台を作ってくれて、それに斑、ハルル、りら、八巻くん、平野さん、先生たちが手を貸してくれたから生まれたもの。
わたし1人の力じゃない。
「だれか1人がトップに立つんじゃなくて、みんなで作っていけるような組になれたらいいなって思います。……でも、なにかあったときには責任を取る人が必要だから、わたしは西ヶ浜の人間として総長になります」
言葉にすることで不思議と覚悟を持てた。
『組長の孫娘』の肩書きにあぐらをかかない。
これが黒刃市に戻ってきたわたしにできることだと思う。