クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「斑も、一緒にやる?……斑がいたら、斑の圧勝だろうけど」
西ヶ浜組のみんなには負けなしだけど、斑には一度も勝てたことがない。
わたしがみんなと一緒にレースをしていると途中で入ってきて、いつもあっさり1位をもぎ取っていく。
初めはヘタクソだったわたしも、おかげで強くなった。
「そうだな」
うーん……?なんだろ……。
『へぇ』と反応したときから斑の声のトーンがひとつ下がった気がする。
「全員乗りこんだぞ」
「あっ、はい」
先生に言われて我に返る。
気のせいだよね。
今は遠足委員の仕事に集中しないと。
そう頭を切りかえて、移動しようとしたときだった。
突然、後ろから手首をつまれた。
はたとふり返れば、真剣な表情をした斑。
本当に真剣かはわからない。一見すればいつもと変わらない表情。
だけど、パーツを部分的に見れば、やっぱり真剣に見える。
わずかに眉根が寄ってるし、唇をぎゅっと結んでいる。表情に陰りも見られる。
「まだ──っ⁉︎」
ぐいんと引きよせられた。