クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「妃崎の言うとおりだ。勝てば一気に西組が優位に立てる。見返すぞ」
「佐紺先輩」
励ましの言葉をくれる妃崎先輩と佐紺先輩。
姫と総長としてみんなを率いてただけあって、度胸があるし心が強い。
すぐにこういう言葉をかけられるのはすごいな。憧れる。
「なら早く稽古するぞ。時間ないんだから」
そして、そう真っ先に稽古の再開を促したのは斑だった。
「えっ、黒桜斑がやる気になってる?」
「あの一匹狼が?」
みんなが驚きの声を漏らす。
たしかに意外でちょっと驚き。やる気とは無縁そうな世界で生きていそうだもん。
……だけど。
演劇祭会議で賭けが成立したとき、斑はひざの上でこぶしを作っていた。
まるで意志を握りしめるみたいに。
あのこぶしは、やっぱり意志の表れだったんだ。
『絶対勝つ』とかそんなことを誓っていたのかな。
意外は意外だけど、なににも興味を示さない斑も心を熱くすることがあるのだと、驚きより嬉しさのほうが強い。