クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「……あ、の…………」
くちびるが離れて、わたしの中から姫がぱっと消える。
頭まっしろ。もう演技できない。
このあとどうすればいいかわかんないし、考えらんない。
混乱、パニック。ドキドキ。
そんなわたしを見て──斑が笑った。
「ッ‼︎」
息が止まるほど、つよく抱きしめられた。
大切なものを腕に抱えこむかのような力強いハグ。
…………もうっ。
台本にないことしないでよ……。
閉まる幕を視界の端で捉えて。これが斑の台本だとわかったわたしは、そんな文句を心の中につぶやきながら斑の背中に手を回してアドリブに応えた。