クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
わたしも誘われるようにふり返った。
となりで「ギャー!」と、やっぱり抑えぎみに騒ぎたてるハルルの声を聞きながら、人ごみが開かれていくのを見守る。
現れたのは、声のイメージと同じ、優しげな空気を身にまとうキレイな男の子だった。
髪は自然由来そうな金色。虹彩は輝きながらも闇をはらんでいそうなグレー。
全体的に線が細く、だけど、人ごみで頭ひとつ飛びぬけているせいか存在感がある。
彼はわたしの前で立ち止まると、跪いたままのわたしにさっと手を差しだしてきた。
キレイでスマート。まるで童話に出てくるような王子さまみたい。
世界観を間違えた王子さま。
「大丈夫?──西ヶ浜苫さん」
「ありがとうございます」
わたしは彼の手に自分の手を重ねて立ちあがった。
「西ヶ浜、苫……だと?」
しどーさんのそんな訝しげな声が届いたのは、わたしが立ちあがるのとほぼ同時だった。