クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
目の前でダークな瞳が睨みつけてくる。
怖い……。
でも、なぜかその瞳から目を離せない。
「西の花姫って……あの?」
「転校してくるのは知ってたけど、あいつが?」
「……西ヶ浜組組長の孫娘」
水面を広がる振動のように、ざわめきがこの場に浸透していく。
顔は知られていなくても、名前だけは有名なわたし。
『西の花姫』なんて恐れ多くも皮肉めいた通り名まである。
マンモス校だからもしかしたらそこまで目立たないんじゃ?とのんきな希望を抱いていた。
まさか初日からこんな形で見つかってしまうなんて……。
時間にしてみればわずかだった。
胸ぐらを掴まれて凄まれて、ざわめきが広がるまでほんのすこしのできごと。