クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「わあぁぁぁっ!」
「キャーッ‼︎」
それは悲鳴と歓声がまじったような大きな騒ぎ。
「……黒桜、斑」
だけど、しどーさんのそのつぶやきは、耳をつんざくほどの騒ぎにまぎれることなく届いた。
彼の目、顔、全身が緊張でこわばってる気がする。
彼だけじゃない。クリスサンにも、わたしに手を貸してくれた王子のような彼にも緊張が走ったのを、わたしは見逃さなかった。
斑が足を下げると、しどーさんがあからさまに眉根を寄せた。
「なんでてめぇが……っ」
斑ってこの学校の有名人なのかな?
そんなことをのんきに思うわたしは、斑の腕の中で安心に浸りきっていたんだと思う。
だから、怒りも見えない斑の無表情にきらりと瞬く眼光を見たとき。
「うちの姫に手ぇ出してんじゃねーよ」
淡々と吐き捨てられたセリフに、不意に胸を叩かれたんだ。