クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
さあ開幕です!
「んん〜。気持ちいい!」
「空気がおいし〜」
バスに揺られること約1時間半。
わたしたちは目的地に降りたった。
「運転手さん。ありがとうございました」
「いいよいいよ。俺も黒刃高校出身だから、生徒さんを乗せられてよかったよ。じゃまた、午後になったら迎えにくるから」
「はい。よろしくお願いします」
バスが去っていくのを、お辞儀して見送った。
おじいちゃんに紹介してもらったここは、私有の山に作られたプライベートキャンプ場。
おじいちゃんが高校生のときに『勝手にみんなでキャンプしに行った』場所だ。
プライベートのキャンプ場だから知りあいにしか貸していないらしく、10日前にも関わらず500人弱の遠足を快く引き受けてくれた。
「遠足できてよかったね」
「ねー。さすが組長の孫だよ」
周囲に耳を傾ければ、そんなわくわくを乗せた声が聞こえてくる。
一方で……。
「山とか最悪ぅ。めっちゃ汚れんじゃーん」
「うわ、電波わる」
「なんもねぇ。これなら陶芸体験のほうがマシだろ」
不平不満の声も上がる。