冷めた紅茶
彼の好みの女になりたくて我慢してきたけど、私はどこまでいっても私だ。
嫌いなものは、どうしたって好きにはなれないし、許せないことは絶対に許せない。
どんなに美辞麗句を並べ立てようと心のこもっていないものは分かってしまう。
その言葉の裏側に何が潜んでいるのか見えるものだ。
街を歩きながらウィンドーに映る自分を見た。
彼好みのカジュアルファッション……。
嫌で嫌で堪らなくなる。
私は私の好きな服を着て好きな物を食べて
言いたいことは、ちゃんと言おうと決めた。
お気に入りのお店へ久しぶりに顔を出す。
スーツやワンピース、パンプス、やっぱり落ち着く。
着替えて新しいスーツで家に帰った。
「おかえり。会って欲しい人が居るの」
と双子の姉に言われた。
リビングに行くと……。
そこに居たのは……。
背の高い男性……。
さっき別れた彼……。
端整な顔が、だんだん青ざめていくのが分かる。
私は、思いっきりの笑顔で
「初めまして」と挨拶した。
了