初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
紡との婚約破棄以来、異性と距離を置くようになった樹理に、彼女の父親は辟易としているようだった。あれから十年、二十六歳になっても彼氏の「か」の字もない娘が結婚に頑なになっているのを見て、父親はどうすれば彼女をその気にさせられるか考え、貴糸の存在を思い出したのだ。婚約者の異母弟で、雲野コーポレーションの御曹司でありながら妾腹ゆえに不当な扱いをされていた娘のお気に入りのことを。
「……じーちゃんは妾腹の子に儂の会社は渡さぬ、って言っていたけど。さすがにそれは横暴だろ? 俺はジュリちゃんと釣り合う男になるために兄貴と同じだけの知識を吸収して、じーちゃんを刺激しないよう義母名義で会社を興した。ポジションとしては雲野コーポレーションの子会社みたいなもんだ」
「それで、菖子さんの名前が」
「そ。ジュリちゃんの親父さんは俺のことを思い出して会社の現状を教えてくれたよ。ジュリちゃんのことも。だから俺が取締役社長に着任することになったのはそういう理由」
「あたしのことは別に関係なくない?」
「ジュリちゃんがいるから、俺はいまの地位を築いたんだけど?」