初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
「その調子じゃ、親父さんからなにもきいてないんだな。ジュリちゃん」
「――う」
「兄貴に婚約破棄されてから、結婚はこりごりだって逃げ回ってるんだって? なぁ、俺ならどう?」
「どう、って」
なにかがおかしい。
貴糸が自分のことを専属の秘書にしたいというはなしだってついさっき聞いたばかりだ。
それなのに彼は結婚のはなしを匂わせる。彼の兄――紡とのあいだにあった婚約破棄騒動のことを口にしてまで。
「混乱してるのはわかるけど、悪いはなしじゃないと思うぜ。俺はようやくジュリちゃんを自分のものにできる、ジュリちゃんは親父さんの会社を建て直せる、ジュリちゃんだって俺のことがすきだーって」
「そ、それ十年以上前のはなしでしょっ! すき、って……」
「まあまあ、恥ずかしがらないの。つまり――だ」
終始にこにこ微笑んでいた父親のことを思い出し、樹理は赤面する。図られた?
「親父さんはようやくお前が結婚したがらない理由に気づいたわけ。それなら初恋の相手の秘書にして、お互いその気にさせればいい、ってね」