初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

   * * *


「ジュリちゃんお酒弱かったの? ならば先に言ってくれよ、調子に乗って飲ませすぎたじゃねえか」
「弱くなんかありましぇんっ! キートがたくさん飲めるならあたいだってっ!」
「酔ってるな……」
「酔ってましぇんっ!」

 居酒屋でお互いのことを語り合っているうちに気がつけば酔っぱらっていた樹理は貴糸に抱きついた状態で喚いている。まいったなぁと言いつつ、貴糸はどこか嬉しそうだ。

「いつ以来だ? 高校の文化祭ぶりか」
「んっと、キートがツムグくんの代わりに合唱コンクール見に来てくれたんだよね! あたいあの頃からツムグくんよりキートの方がカッコいいって思っていたんだよ!」
「負け惜しみじゃなくて?」

 貴糸には母親違いの十歳年上の兄がいる。樹理の婚約者だった雲野紡だ。だが、彼は自分より年上の女性と恋愛関係に陥り、ひとまわり年下の婚約者の前から去ってしまった。この婚約自体、当事者たちが生まれる前に互いの祖父たちが言い合って決めたようなものだから気にすることはないと両親は言っていたが、それでも優しいお兄ちゃんが自分の前からいなくなってしまったことが樹理にはショックだった。
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