初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
当時の樹理はまだ三歳で婚約の意味が理解できなかったし、十五歳の紡も似たようなものだっただろう。ただ、紡の異母弟で五歳の貴糸も一緒に樹理のもとへ毎週のように遊びに来てくれていた。紡を親戚のお兄ちゃんくらいにしか思っていなかった樹理は、彼が社会人になってから少しずつ距離を取りはじめたことを残念に思ったが、それでも貴糸の方がことあるごとに樹理の家に寄り道してはおすすめの本を貸してくれたり、美味しそうな輸入おやつを分けてくれたりしていたから寂しくはなかった。もしかしたらおやつで餌付けされていたのかもしれない。それだけ当時小学生の樹理は貴糸の訪れを楽しみにしていたのだ。
けれどその穏やかな日々は高校一年生の夏に、紡による婚約破棄によって崩れ去った。
「ああ……スーツ姿のジュリちゃんに俺、欲情してるわ」
「あたしじゃなくて、スーツに欲情してる、の?」
「んなわぇねぇだろ。つーか酔いはもう覚めたか」
「まだふわふわするけど、意識はちゃんとしてるよー? ねえ、キスより先のこと、キートと、したいな……ダメ?」
「ッ! 反則だろそれ……ダメなものか。十年前にはできなかったこと、たくさんしてやるよ」