初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

 突然のことだった。
 ――紡が年上の女性と恋愛関係に陥り子を孕ませていた。
 そのショッキングな出来事は樹理と貴糸のあいだにも壁を作ってしまった。十八歳になっていた貴糸は「これじゃあもう会えないな」と樹理から離れていった。その後、貴糸は大学進学のために上京したと知らされたが、樹理は連絡先をもらうこともなかった。だから失恋したのだと悟った。
 ずっと傍にいてくれたのに、婚約者の弟でしかなかった貴糸は、兄が婚約破棄をしたことで樹理の傍にいられないと去ってしまったのだ。紡の後釜に座って樹理と結婚してくれるものだと思っていたのに、彼は逃げるようにいなくなってしまった。当時高校生の樹理が追いかけることなどできるわけもなく、そのまま十年が経ってしまった。

「なんであのとき何も言ってくれなかったの?」
「最低な兄貴と同じことをしたくなかったからさ」
「ツムグくん?」
「兄貴ともキスしたんだろ?」
「そりゃ……婚約者だったんだか……ンっ!!」
「ファーストキスは俺だと思ったんだけどなぁ」
「……知ら、ないっ」
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