死グナル/連作SFホラー
閉じれない瞼⑤
農協職員:川口菜々の場合



「じゃあ私…、結局は、これからどうすればいいんでしょうか…」


私の口から出た言葉には、明らかに落胆した気持ちが滲み出ていたと思います…。


「川口さん…、私は本職の傍ら、普通の人以上の感性を授かった自覚から、ライフワークの一環として多くの”相談”に携わってきた。…私なんかでも、明らかに”憑りつかれてる”人たちを、数多くこの眼でね…。でも、今回のあなた方の症例は、霊現象の範疇ではないと言い切れないながらも、精神面以外の実害はないわよね?」


「まあ…、そうなると私も思います…」


「俗にいう、悪霊という存在は人によってさまざまだと思うけど、ツボにはまった”それ”の現象って、やっぱり半端じゃないわ。私とて、そこからのエスケープ・ゲートの過程に何度か関わって来てね…。命の引っ張り合いなのよ、あの世とこの世の。…翻って、あなた方を苦しませてる現象は、そこには行ってないのよね。少なくとも…」


Hさんの言っている意味は理解できました。
確かに私の抱えているこの現象は、言い様もないほどの苦しみではありますが、実際に呪われたりとか、目に見える形で自分に災いが及んだということはありません。
近しい人が死んだとかとかも、今のところはないですし…。


***


「それでもねえ…、今生きてる人のよ、なんとあの世に行った後の姿をどアップで見せられたんじゃあねえ…。私だって気が変になるかも知れないわよ。深刻だと思うわ」


Hさんからは誠意が感じられました。
霊能者という肩書きをもった目線の上での…。


「…その上で頭を整理すれば、到底、全面解決には及ばなくとも、これからの長い人生へプラスに転換できる手がかりは探れると思うのよ」


「はい!では、それを教授ください、Hさん…」


私は懇願していました…。





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