二度目の好きをもらえますか?
 首を傾げて平然と答えると、彼は幾らか不服そうに眉をしかめ、「ならいい」と言った。

 外履に履き替え、私を通り越して正門へと向かう。

 気を取り直して、私も帰宅する事にした。

 一歩踏み出した時。いつも私の癒しだった声が耳に飛び込み、廊下の奥を見つめる。

 結城くんが彼女と手を繋ぎながら、昇降口(こっち)へ歩いて来るところだった。

 ……っ、やだ。

 不意に居た堪れなくなり、ギュッと心臓部を握りしめた。私は逃げるように正門へと駆けた。

 先に出た大谷くんの背中が見えてホッとなる。

 彼の後ろを、等間隔を空けて歩き出した。

 しかし、右に曲がって左に曲がって、交差点を越えて直進しても行き先は変わらず、同じだった。

 時折、前を歩く大谷くんが曖昧に振り返りため息をもらす。まるで付いてくるなよ、とでも言いたげに。

 全く進路が変わらないまま、自宅前まで辿り着く。そして気付いた。

「土曜に引越してきたの、賢ちゃんだったんだ……」

 誰にともなく言ったひとりごとだったが、大谷くんはチッ、と舌打ちをついて門扉を開けた。

 隣りの席に、隣りの家。おまけに一応、幼馴染み……?

 何だこれ、変なの。まるで漫画みたい。
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