二度目の好きをもらえますか?
 そう考えた自分が馬鹿馬鹿しくて、苦笑いする。

 私も門扉に手を掛け、玄関扉を開けた。

 リビングでテレビを点けながら、出された課題を適当にクリアする。

 夕飯にお母さんが作ったメンチカツやサラダに箸をつけ、早々と食器を下げた。

「さっちゃん、それだけで足りる? 肉じゃがもあるわよ?」

「……いや、いい」

 そんなに食べれないし。

 器によそおうとするお母さんに首を振り、私は二階の部屋へこもった。

 とにかく、失恋の修復には疑似恋愛が一番と決めつけて、お気に入りの少女漫画を片っ端から読むことにした。

 主人公が恋をするイケメンヒーローを見るたびに、どうしてか似ても似つかない結城くんの顔を思い出した。

 駄目だ……。

 好きな漫画に没頭する事もできず、表紙を閉じた時。

 外からドルルン、と唸るような排気音が聞こえた。目の前のテーブルに漫画を置いて、ベッドに上がる。

 まだロールスクリーンも下ろしていない出窓を開けて見下ろすと、バイクに跨った人影がちょうど走り出した所だった。

 もしかして。賢ちゃん、かな?
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