二度目の好きをもらえますか?
 心の中で悪態をついたところで、今日自分が言った言葉を思い出した。

 ーー「誰かれかまわずには言わないんじゃないかな。それにわざわざ話題にしないだろうし」

 やっぱり。

 そういう事、なの?

 誰にも言ってないだけで、密かに復活って……。

「さっちゃーん」とお母さんの声に呼ばれる。

「もう一時間も浸かってるでしょう? そろそろ出なさい」

「っはぁい」

 ザバァ、とお湯をゆらし、私は仕方なく脱衣所に出た。

 充分過ぎるほど温まった体にバスタオルを巻き、先に準備していた部屋着に着替える。黒猫のフードがついたパーカーだ。ピンク色のラインがところどころに入っていて、気に入っている。

 少しクセのあるボブヘアーをフェイスタオルで拭いていると、浴室の窓の方から唸るような排気音が聞こえた。

 帰って来た!

 肩に掛けたタオルを取り、急いで玄関に向かう。一瞬、お母さんの声に呼ばれたような気がしたけれど、後ろ手にドアを閉めて、サンダルで隣家へと走った。

 二つのヘルメットを持った彼が、タイミング良く駐車場から出て来たところで、その姿を見るなり、私は「あっ」と声を上げた。

 賢ちゃんはギョッとした様子で肩を揺らした。目を見張ったままで足を止め、無言だった。

「……お、お帰り?」

 私はぎこちなく笑った。

 おそらく時間にすると、今は九時半過ぎだろう。
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