二度目の好きをもらえますか?
「も、もしもし? 賢ちゃん?」

『何だよ』

 身近に声を聞くだけでカァッと頬が熱くなる。初めて電話した時以上に、彼を意識していると思った。

「っあ、あのね。ちょ、ちょっと賢ちゃんにお願いがあって」

 言いながら私は、右手の甲で熱くなった頬を押さえた。気休め程度の熱が手に移るだけであまり効果はない。

『……お願い?』

 スマホの向こうで、彼が怪訝な顔をしている気がした。私は電話の向こうに気付かれないように、スゥッと息を吸って吐いた。

「バイクに、乗せてくれないかな? また……」

『え……』

「あっ、今すぐに、とかじゃないの。できたら週末に……賢ちゃんの都合が良い時でいいから」

『……』

 賢ちゃんは無言だった。

「あの、ほら。土曜の午前中とかさ……どうかな?」

 ベッドに置いた写真を見つめ、私は出窓の床板に手を付いた。下ろし切ったロールスクリーンを捲り、隣家の窓に視線を飛ばす。

 遮光カーテンの隙間からは、細い明かりがもれている。部屋にいるんだと思った。

「えっと……日曜でもいいんだけど」

『…………』

 彼の沈黙が私の心臓を痛くする。黙っているのが怖くて私はまた声を出した。

「ごめん、都合悪い、かな?」

『……悪いけど。もう彩月を乗せる事はできない』
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