二度目の好きをもらえますか?
 賢ちゃんと出会う前までは、一度もそんな無茶をした事はなかった。

 私自身が夜出歩く事を良しとしなかったせいもある。

「でもさ、さすがに過保護だよね」

『うーん……そうかな? それだけ彩月の事を大事に思ってくれてる証拠だよ。私は彩月のお母さん好きだよ』

「ははっ、そっか。……うん、ありがと」

 天井を見つめながら、私は自然と口角を上げていた。

 麻衣子って凄いなぁ。

 麻衣子と喋ると不思議と元気になる。夕方賢ちゃんと話して泣いてしまったのが嘘みたいだ。

『で。相談って……、門限の事?』

「……あぁ〜、ううん」

 先週の金曜日から今日に至るまでを思い浮かべ、私はぎこちなく笑みを固めた。

『大谷の事、だよね? 何があったの?』

 麻衣子の優しい声に促されて、私は記憶を頼りに、順を追って話す事にした。

 金曜日のトンビに油揚げから、今日美鈴の告白を立ち聞きしてしまった事、

 その答えから賢ちゃんには好きな人がいる事、

 夕方思い切って電話を掛けた事、

 そして……もうバイクには乗せないと言われた事、

 それらを全て言い終えると、麻衣子は『はぁ』とどこか感心したような声を出した。
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