二度目の好きをもらえますか?
 深夜なのでそろりと階段を降りて、リビングにいるお父さんにお帰りのひとことぐらい掛けるべきかと思った。

「今日賢二くんが帰って来た時に……ちゃんと話したわ」

 ……え?

 リビングのドアノブに手を掛けようとしたところで、お母さんの声が私の手を止めた。

「……そうか」

「やっぱりあの子、何回かバイクに乗せて貰ってたみたい。危ないからやめて欲しいってお願いしたら、すんなりと聞き入れてはくれたけど」

 脱いだスーツをお母さんに渡しながら、お父さんが「うーん」と唸った。

「……どういう事?」

 気付いた時にはドアノブを押して、私はリビングに足を踏み入れていた。

「……彩月」

「さっちゃん?? ど、どうしたの? 起こしちゃった?」

 お父さんとお母さんが驚いている。お父さんはバツの悪そうな顔で目を逸らすが、お母さんは笑ってその場を取り繕おうとしている。

「ねぇ、今のなに? 賢ちゃんと話したって、バイクの事……お母さんが言ったんだ??」

 二人の会話から私はすぐに状況を把握した。

「……そうよ」

 お母さんは笑みを消し、落ち着いた声で肯定した。

「なんで?」
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